大隅良典教授の医学・生理学ノーベル賞受賞、おめでとうございます。
医学・生理学の部門では、日本人の受賞が3年連続となりました。
ノーベル賞もオリンピック同様、本来は国ごとのメダルの数を競い合うためにあるわけではないでしょう。
ただ、どの分野でどの国の人がどの時期に多く受賞しているかを見て、その理由を考えてみることはできるでしょう。
私は子どもと一緒に三ヶ国の小学校を体験しました。フランス、ベルギー、日本です。
日本では、「海外」と日本を
比べることが多いですね。でも、「海外」と言っても、世界には数えきれないくらい多くの文化圏があって、それぞれに違いがあります。
ヨーロッパの中で比べても、かなり違うのです。
ベルギー、フランスという隣り合った国、同じフランス語を使う国同士でも、やっぱり様々な違いがあります。
例えば、フランスの小学校1年は、読み書きが中心でした。ちなみに、子どもが通っていたのは、伝統的なカトリック系私立でした。フランスでも、モンテッソーリやシュタイナーなど、オルタナティブな教育を行っている学校もあります。
子どもの学校では、来る日も来る日も読み書きをやっていて、持ち帰る宿題も読み書きばかりでした。
読み書きと言っても、正しく書き、読むことを覚えるのが勉強で、作文などは一切ありませんでした。
ベルギーでは、算数にも力を入れていました。読み書きの進度は、2年生の時点でフランスより遅れていましたが、3年生にもなると変わりはなくなります。
ただ、どちらの国でも、子どもの好奇心を刺激するとか、それに寄り添うということはあまりありませんでした。
我が家の子どもは、小学校1年生の半分くらいを日本で過ごしました。チューリップを育てて観察したことが、強く印象に残っているようです。
鉄は熱いうちに打てといいます。幼い頃は誰でも好奇心があるもので、低学年のうちに実物を観察したり、触ってみたり、試してみることが大切なのでは。
我が家の子どもがベルギーで2年生だった時の話です。先生が、オタマジャクシはカエルの子であるとみんなに説明しました。カエルになると、シッポはなくなります、と。
一人の子が「シッポはどこに行くんですか」と質問しました。
先生は知らなかったそうです。
その先生は別の意味ではいい先生でした。知らないことを知らないと正直に言ってくれてよかったとも思います。
でも、先生はオタマジャクシがカエルになるのを見たことがないのですね。
抽象的な知識だけを知っていて、それを生徒に伝え、子どもたちもまた、知識だけを受け取っているのです。
ちょっと自慢させてもらうと、我が家の子どもはオタマジャクシのシッポがどうなるか、学校に上がる前から知っていました。
オタマジャクシを捕まえて、飼ったことがあるからです。シッポがなくなり、手足が生えたカエルを、見つけた川に放しに行ったことがあったからです‥
同じヨーロッパでも、ドイツやイギリス、北欧では、また事情が違うでしょう。アメリカやカナダはまた別でしょう。
日本は、明治にも戦後にも、西洋をモデルとして取り入れ、アレンジしてきました。教育に関しても、最初はどこかの国がモデルになっていたのでしょう。
そのモデルと、それから、昔からの身近な自然との付き合い方は、けっこうマッチしていたのかもしれません。例えば、子どもが虫を持ち帰ったとき、「キャー、気持ち悪い!汚い!」とは言わないで、空き瓶を探してきて穴を開けてやるような態度。
そんな些細なことからも、科学的好奇心は育まれていくのでは。