2017年10月14日土曜日

ノーベル文学賞2017年、カズオ・イシグロ氏はイギリスの作家


今年のノーベル文学賞は、ヨーロッパでも人気の高いカズオ・イシグロ氏に決まった。

日本のニュースを見ていると、「日系、日系」と言って騒いでいる。

彼は長崎に生まれ、5歳の時イギリスに渡ったのだから、日系には違いない。

しかし、彼の文学の言語は英語であり、教育を受けたのもイギリスで、作家となる前に働いていたのもイギリスである。

小説家としてのカズオ・イシグロが作られたのはイギリスであり、英語によってなのだ。

もちろん、日本語の感覚や5歳までの記憶も彼の一部を成している要素には違いないだろう。

しかし!
昨日のニュースでは、彼の思春期を知る人や、大学の先生、作家としての形成期に関するインタビュー等は一つもなかった。
これから出てくるとは思うが、当日にイギリスで周囲の人からインタビューを取ることがそんなに大変なことなのだろうか。
英語の通訳ならいくらでもいるのに。

ヨーロッパに住んでいると、様々なバックグラウンドを持った人々と出会う。
両親や祖父母がアジアやアフリカから来たという人も多い。
親の片方が外国人だったという人も珍しくない。
どんなバックグラウンドを持っていても、今フランスに住んでいて、フランス国籍を持っているなら、彼らは皆フランス人だ。
国籍を複数持っている人も普通にいる。
親の一人が外国人の場合など、二つ国籍を持つのが一般的だ。
どちらか片方を選ばされるということはない。
どちらもその人の一部なのだから。

カズオ・イシグロさんは日系であり、同時にイギリス人なのだ。
彼の生活、仕事、6歳以降の自己形成の場は、イギリスである。

日系、日系と言って、イギリスという言葉があまりにも少ないニュースに違和感を覚える。

彼は、長崎出身の、イギリスの作家だと言えば、より正確なのかもしれない。

試しに第三国であるフランスの新聞の記事を見てみると、フランスの二大新聞の一つ、ルモンドの見出しは

「ノーベル文学賞、イギリスの作家カズオ・イシグロ氏に」

となっている。

もう一つのル・フィガロ紙は

「2017年ノーベル文学賞、カズオ・イシグロ氏に嬉しい驚き」

という見出しの後で、「栄誉ある賞はイギリスの作家カズオ・イシグロ氏に授与されることが決まった」
と続けている。

最後に念のため付け加えれば、栄誉を受けたのは日本でもなければイギリスでもなく、作家本人である。

(写真はノーベル賞授与式後に晩餐会が開かれるストックホルムの市庁舎)

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