2014年10月8日水曜日

思い出す子供たち -1-

我が家の子供も今では小学校の高学年。まだまだ人生の初心者ですが、これまでにも色々な出会いがありました。その中でも、特によく覚えている子供たちがいます。

ムスコが通ったパリの幼稚園は、隣のマンションにくっついていました。園庭は幼稚園の建物の半地下にあり、 地面はコンクリートでしたが、表面にコンクリートを和らげるコーティングがしてありました。両側はゆるやかな階段状になっていて、子供たちが跳ねたりして遊べるようになっていました。

幼稚園で最初に一緒に遊ぶようになった男の子。金髪の巻き毛と青い目が愛らしく、ほっそりした子供でした。仮に、リスくんとしておきましょう。

ムスコは幼稚園に行きたくないと申します。甘えん坊だからかな、と思っていました。

ある日、帰って来たムスコの目の近くに小さな傷がありました。いつものように幼稚園の愚痴を並べ立てる子供に、「そんなことは大したことじゃないでしょ。」と言ってから、「ところで、その傷はどうしたの?」と聞くと、「リスくんに階段のところで蹴られて転んだの。でも、そんなことは大したことじゃないね」私はギョッとして、「それは危ないよ。そういうことはお話ししてね。」

幼い子には、何が重大なことで何が些細なことなのか、自分で判断をつけることができないのだ、全部聞いてあげなくちゃいけないのだ、とつくづく悟りました。

ムスコは毎日のようにリスくんにぶたれたり蹴られたりしていたようで、先生や園長先生に相談しました。

リスくんの態度は、先生からの指導があっても、ムスコがやめてくれと言っても、良くなりませんでした。ムスコにはリスくんから離れるように言いましたが、「だってあの子がついてきちゃうんだよ」

そして、リスくんはムスコにこんなことを言ったそうです。
「君がいなくなったら、ぼく生きていけない」
「パパもママも優しくしてくれない」
「家で気持ち悪くなったら、一人で洗面器に吐いて、自分で洗面器を洗うの」

我が家にリスくんを招いたことはありましたが、ムスコが「今度はきみのうちに行っていい?」と聞くと、「ママが駄目って言うから」

リスくんを預かっている女性も、子供に優しく接しているようには見えませんでした。

ただ、虐待を受けているとか、ご飯も食べさせてもらってない、ということはないようでした。それで、私は、子供から聞いたことをそっくり幼稚園に伝えることはせず、園長先生にこうお話しました。

「リスくんは、悪い事をするというので、幼稚園でしょっちゅう罰を受けているようですが、あまり効き目がありませんね。罰を与えるより、話を聞いてあげたらどうですか。家で寂しい思いをしていないか、預かってもらっている人との関係はどうなのか。」

リスくんは、幼稚園でもお腹が痛くなることが多かったようです。お腹が痛い、と言うと、先生は「私には何もしてあげられません」と答えたそうです。

フランスの幼稚園や保育園では、子供に薬を与えるにあたって、厳しい規則があります。園によっては、医師の処方箋がある時にかぎって、先生が薬を与えるところもありますし、処方箋があっても、園で薬は与えられないというところもあります。投薬によって万が一子供の状態が悪化した場合、責任を取ることはできないという立場です。

ただ、薬はあげられないとしても、「大丈夫?」と優しく声をかけてあげたり、慰めてあげるだけでも、子供は気分が良くなることがありますね。

リスくんの態度がひどくなり、ムスコが椅子から突き落とされたりしたある日、先生にお話すると、「リスくんは最近乱暴ばかりして、私はあの子に怒ってばかりいるんです」ということでした。怒ってばかりいるのは、考えなくてもできることです。

リスくんの態度が改まることはなく、ムスコは他の友達を作りました。相手が嫌がることをしたら、友達はいなくなる、相手が嫌がることをしなければ、友達ができる。この単純な法則を、彼も今は理解しているでしょうか。

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