2014年10月28日火曜日

フランスの新しい結婚

20%以下と支持率の落ちているオランド大統領。しかし、誰ならもっといいのか、ということになると、難しいところです。

オランド大統領も、何もしなかったわけではありません。2013年には、一部の反対を押し切って、同性カップルの結婚を法的に認めました。

同性カップルが少数だからといって、異性カップルと同じ権利を認めないということでは、全ての人の平等を謳う民主主義の原則に反するということでしょう。

同性カップルの結婚、一番早かったのはオランダで2001年。(デンマークでは、それより以前、1989年に、結婚という言葉こそ使っていませんが、同性カップルに異性カップルと同じ権利を与えています。)2003年にはベルギーで正式に結婚が認められ、カナダやアメリカ、イギリスは州ごとに認めていきました。その他、北欧諸国や南アフリカ、スペイン、アルゼンチン等、フランス以前に認めていた国は少なくありません。

結婚と言っても、カトリック教会は同性同士の結婚を認めていないのですから、神の前での結婚ではなく、市長が執り行う結婚のみで、民法上のものです。カナダやスェーデン、アメリカの一部のプロテスタント教会では、同性同士の結婚を認めているそうですね。

「全ての人のための結婚」 - この新法について初めて聞いたとき、私は当然、同性愛の友人たちの顔を思い浮かべたわけですが、彼らのために喜ぶというより、反動を危惧しました。

欧米ではカミング・アウトしている同性愛者も多く、前のパリ市長もその一人でした。市民権を得ているかのように見えるかもしれませんが、宗教的なタブーと結びついているため、実はそんなに簡単ではないのです。

他の国の事情はよく知りませんが、フランスには、同性愛者を差別する人の中に暴力を振るう人もいて、からかわれるとか変な目で見られるというレベルでは済まない場合もあります。

キリスト教以前のローマ帝国では、男性同士の結婚があったことが記録されているようです。また、アメリカの先住民は同性同士の結婚を認めていました。

フランスでは、法律の制定前から、「全ての人のための結婚」に反対する「全ての人のためのデモ」というのが盛り上がりを見せ、法律制定後も、取り消しを求めて活動しています。今年10月にも、開催者によれば50万人、警察によれば7万人がパリでデモ行進しました。

彼らは「家族」とか「子供」とか、誰も反対できないような価値を掲げ、繰り返し「私たちは同性愛者を差別しているわけではない」と主張するのですが、実際のデモの際にはその主張とは裏腹の叫びも聞こえ、さらに、人種差別的言動も問題となっています。

この法律を通したトビラ法務大臣はギニア出身の女性。2013年に彼女が新法制定のためにフランスの地方都市アンジェを訪れると、「全ての人のためのデモ」が集まっていました。両親に付き添われた11歳の少女がバナナの皮を持って進み出ると、法務大臣に向かって、 「雌豚め、お前のバナナを食え!」と叫んで‥周りにいた他の子供たちも同じ文句を大合唱。デモの大人たちは少しもこれを制止しようとしませんでした。それどころか、デモ隊の行進中、同じ言葉を叫んでいるのが聞かれました‥

今年10月20日には、こん棒を持った若い男が同性愛らしい男性をめった打ちにするという事件も起こりました。被害者は重傷を負って入院。加害者は禁固2年の実刑。

この事件が起こったヴァンデ地方では、オランド大統領に反対する政治家が「全ての人のためのデモ」を応援しています。彼らの差別的言論が、影響されやすい人々を興奮させ、暴力事件に至った側面は否定しがたいものです。しかし、事件後にインタビューされた政治家たちは反省の色も見せず、事件とは全く関係無しというコメント。

自由・平等・博愛を掲げる人権の国、フランスの影の顔でしょう。どの国にも光の顔と影の顔があります。それを認めることなしに健全な発展はあり得ませんよね。

「全ての人のためのデモ」は、オランド大統領の反対勢力である国民運動連合に対して、政権を取ったらこの法律を取り消すと約束させています。

同性愛者の友人アランはこう言いました。「ぼくは別に結婚したいなんて思ったことはない。あの法律ができてからというもの、白い目で見られることが増えた。そっとしといてほしいよ。」

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