2014年10月16日木曜日

ノーベル文学賞2014 - 続き

「嬉しいです。でも、変だなぁ。」

というのが、AFP通信に答えたパトリック・モディアノの第一声だったそうです。

どんな文学に影響を受けたかという質問に、フランス文学以外ではアメリカ文学と日本文学、と答えました。「省略法」、「シンプルな文」という言葉を何度も口にしました。

モディアノと言ってもあまり馴染みのない方が多いかもしれませんが、日本でも人気のあるパトリス•ルコント監督『イヴォンヌの香り』の原作者です。ルコント監督もインタビューを受け、「びっくりしましたけど、とても嬉しいです。ノーベル賞は政治的にアンガジェしてる作家しか貰えないと思ってたものですから。彼の本は全部読んでますよ!『悲しみのヴィラ』を映画化した時、プロデューサーに譲歩して、タイトルを『イヴォンヌの香り』と変えたことを悔やんでます。」

モディアノ作品を出版しているガリマール社のアントワーヌ・ガリマールも 「まさか取れるとは思っていませんでした。ノーベル賞の審査員は政治的にアンガジェしている作家ばかり選んでいると思っていたので。(‥)でも私はノーベル賞のことを勘違いしていたんですね。この選択にブラボーと言いたい気持ちです。普通、出版社は少し前に知らされるものなんですが、今回は私たちも知りませんでした。」

6年前にノーベル賞を取った、同じフランスのルクレジオもガリマールから本を出していたわけですが、フランスの作家に限らなければ、ガリマールで出版した作家として、モディアノは40人目のノーベル賞受賞者となるそうです。ガリマールでは早速、10月始めに出たばかりのモディアノの最新作『君が近所で迷子にならないために』を十万部増刷する手配をしたとか。

過ぎ去らない過去をさぐり、ぼやけた記憶とあいまいな感情の中から、想像の糸を紡いで作品を生み出す‥モディアノ氏のインタビューは、そんな彼の作風通りだったようです。

「ええと‥そう‥つまり‥でも‥」

「その時までは、全てが混沌としてバラバラに思えた‥何かのかけらか切れ端が、時折だしぬけに浮かび上がって来るように‥しかし、結局、そういうものなのではないか、人生とは。」(モディアノ『薄暗い店の並ぶ通り』)

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