2016年6月24日金曜日

山羊を飼っていた伯父が若かったころ


伯父は農業を営んでいたけれど、農家に生まれたわけではなかった。

戦争が始まったとき(というか、誰かが戦争を始めたとき。戦争は自然に「始まる」ものではない)、伯父は兵役適齢期だった。

伯父と繋がりが深かった伯父の祖父母は、農家だった。

当時、農家の長男だと、兵隊に取られにくいと言われていた。そこで、伯父は祖父母の養子になった。

救えるものは救おうということだったのだろう。

伯父には弟が二人いて、上の弟は、後に特攻隊に入った。

当時、本当に何が起こっているのか知っている者はごくわずかだった。

母は彼らより年下で、戦争が終わった後、大学に行った。

「伯父さんの方が成績が良かったの。本もいっぱい読んでいたし。本当は、伯父さんが大学に行くべきだった。」

母はよくそう言っていた。

伯父は病弱だったがよく働き、野良仕事は彼を丈夫にしたようだった。

農業だけではやっていけなかったので、ラジオの部品のようなものも作っていた。

よく冗談を言って、私たちは笑い転げたものだった。

もし、まだ伯父に何かを思うことができるなら、どんな思いがよぎっているだろう。何を、思い出しているだろう。



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