フランスに住んでいたとき、あまりデパートに出かける機会はありませんでしたが、たまには私もデパートに用事がありました。
そんな珍しいある日、ギャラリー・ラファイエットというパリの有名デパートでの出来事。
グルメ・コーナーの小さなイートインで一休みしようと、トレイを持って歩いていた私は、日本人らしき女性に気づきました。
その人はとてもご機嫌のようで、満面に笑みをたたえて、あちこち見まわしていました。
ヨーロッパやアメリカでは、知らない人同士で笑みを交わすのはよくあることです。私はその人に微笑みかけました。
ところが、私に気づいた途端、その人の表情は硬くなり、嫌な表情に変わったかと思うと、あからさまにそっぽを向きました。
私はちょっとショックでしたが、彼女はフランスに住んでいないか、または、フランスに来て間もないのだろう、と思いました。
外国や外国人が大好きな人の中には、外国で同国人に会いたくない人もいます。
実は、この現象は日本人に限ったものではありません。
知人のフランス人で、大学のとき日本に留学した人がいます。
フランスに住む彼のお母さんの話では、日本に来た当初、彼はフランス人と会いたがらなかったそうです。
私も当時の彼を覚えていますが、本当に日本に恋してるという感じでした。日本を離れなければならなかったときは、悲しくて泣いたと話していました。
その後、彼は日本人と結婚し、もう20年以上日本で仕事をしています。
今では、日本の悪いところも、ちゃんと見えるようです。
別のフランス人の話では、東京で西洋人を見かけ、ごく普通に微笑みかけたら、やはりそっぽを向かれたということでした。
心理学では、この「同国人嫌い」と「外国人嫌い」は、実は同じものだという説もあるそうです。
ギャラリー・ラファイエットで私が出会った女性は、私が食べ終えてそそくさと席を立つまで、ずーっとそっぽを向いたままでした。
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