ある時わたしは、セネガルの人とイタリアの町、ベローナを歩いていました。
彼とは仕事で一緒になり、仕事が終わった後のひと時、ぶらぶらしていたのでした。
突然、彼は壁に寄り掛かった一人のアフリカ人らしき人に近づき、熱心に握手をしました。
戻ってきた彼に、私は聞きました。
「お知り合いですか。」
「そうじゃないけど、彼もセネガル人なんです。」
「アフリカでも、セネガル出身だと見ただけでわかるんですか。」
「わかります。」
彼は、レオポール・セダール・サンゴールの、確か孫にあたる人でした。
サンゴールは、セネガルの初代大統領にして詩人。1983年には、アフリカ出身者として初の、フランス・アカデミー会員に選ばれています。
おじいさんから聞いた言葉として、彼はこんなことをみんなに話してくれました。
「世の中には、人と人の間に橋を作る人もいれば、人と人の間に壁を作る人もいる。」
写真は、パリのセーヌ川にかかるレオポール・セダール・サンゴール橋。
この橋がかかるパリで、私は、日本人びいきのタクシー運転手に遭ったこともあります。
その人もアフリカ出身者でした。
彼が言うには、日本人のお客さんが好きな理由の一つは、日本人が値切らないこと。
もう一つは、まだ駆け出しだったとき、とても寛容な日本人のお客さんに遭ったことだそうです。
その頃は、ナビなんてなくて、彼は目的地に着くまでさんざん迷ってしまいました。
でも、その日本人カップルは、少しも怒ることなく、楽しそうに笑っていたそうです。
すっかり遠回りして、ようやく目的地に着くと、その日本人たちは何も文句を言わず、遠回りした料金も払ってくれた。男性の方は彼の肩を叩き、女性は面白そうに笑っていた・・・
その話、十分に信じられます。
ただ、その同じ日本人が、新宿区で急いでいる時、日本人のタクシー運転手に同じ態度を取るかな、と、私は思わずにいられませんでした。
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